bac-Discography

 bacはシングルを含め9枚のCDをリリースしていますが、ここではConnorがソリストを務めた1st・2ndアルバム以降のCDを紹介します。

@「blue bird
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まずはbac3枚目のアルバム、「blue bird」です。ソリストはConnorのすぐ下の弟、Edwardに変わっています。
 最初にこのアルバムを聴いたときの感想は、「音が小さすぎて聞こえない!」でした…。他のCDとは明らかに録音レベルが違って、こもったような音になっていて声が聞こえづらいのです。私はほとんど車でCDを聴くので、特に聞こえづらいです。まだ少年合唱の声に耳が慣れていなかったというせいもあったと思いますが、今はだいぶ聞こえるようになりました。

 そのせいか、初めてエドの歌声を聴いた印象は、“ふわっとした弱々しい儚げな声”でした。後に他のCDを聴いて、それほど弱々しくないとわかったのですが、どちらにしろConnorの硬質で真っ直ぐな声とはまた違って、優しく柔らかい声だなあと思いました。
 エドが歌っている動画は今でもいくつか見ることができますが、真っ直ぐな瞳で口を大きく開け、一生懸命に歌う姿が印象的です。

  1.The Blue Bird             6.Hymn-O for a closer walk with God
  2.Lully, lulla, thou little tiny child  7.Miserere
  3.Magnificat in G            8.Beati quorum via
  4.Nunc Dimittis             9.Diaphenia
  5.O for the Wings of a Dove       10.Sleepsong


 私がこの中で一番好きなのは、第3曲目の「Magnificat in G」です。メロディーがとてもきれいで、特に2分過ぎくらいの音が階段状に上がって盛り上がっていくところが好きです。エドの優しい声がピッタリ。
 あとは、第5曲目の「O for the Wings…」も好きです。もともと好きな曲ですが、トレブルのみのアンサンブルは珍しく、フルコーラスに比べると迫力には欠けるかもしれませんが、ハーモニーがきれいで少年合唱ヴァージョンもいいなあと思います。
 そしてやはりボーイソプラノの王道(?)、「Miserere」でしょう。この曲はhigh Cという高音が出てくる難易度の高い曲ですが、エドは正確な音程で憂いを感じさせるような、真っ直ぐ突き刺さる声で歌っています。この曲を聴くと、「弱々しい」なんて言えないなあと思います。
 また、MiserereではConnorがテノールを担当しています。初めての低音パート!でも、まだ完全に変声しきっていないのでしょう。ちょっと無理に低音を出している印象があります。でも何と言ってもやっぱり音量が小さくて、よく聞こえないのが残念。

 また、余談ですがブックレットのメンバー紹介の写真のConnorが格好良くて好きです(bacのCDの顔写真の中では一番!)。わざとカメラ目線をはずしてポケットに手を入れ、壁に寄りかかっているのですが、少年から抜け出し青年となる途中の最も美しい(?)時期なのではと思います。次のアルバム「air」ではだいぶ成長した顔が見られますから…。
 bacファンの中ではエドファンも多いですが、エドの声を堪能できる一枚だと思います。


A「air」
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4枚目のアルバム、「air」です。このアルバムの特徴は、アイリッシュ&ケルティック・ミュージックを集めており、通常のボーイソプラノが歌う曲とは少し趣きが違っていることです。ブックレットの解説には、「Burrowes家のルーツともいうべき、アイリッシュの伝統的な曲」「彼らの祖父は現在もアイルランドに住んでおり、Connorは原語のゲール語の英訳を彼に頼んだ」と書いてあります。(Connorの祖父、Alfredさんについては「Connor Burrowes: Background and Early Years記事参照」)
 また、もう1つの特徴としては、ソリスト3人がそれぞれ2〜3曲ずつソロを担当していること(Connorを含めたら4人!)。今までは1人のソリストがそのアルバムを担当していましたが、今回は様々なソリストの声を楽しむことができます。

   
1.Silent, Oh Moyle       Soloist: Andrew Johnson
   2.Sliabh Geal gCua       Soloist: Andrew Johnson
   3.The Flower of Magherally   Soloist: Edward Burrowes
   4.Shule Aroon(Suil a ruin)   Soloist: Patrick Burrowes
   5.Dulaman            Soloist: Patrick Burrowes
   6.Our Father, God Celestial   Soloist: Andrew Johnson
   7.Expectans Expectavi
   8.O Magnum Mysterium
   9.The Lark in the Clear Air   Soloist: Patrick Burrowes
   10.The Last Rose of Summer    Soloist: Edward Burrowes
   11.The Mermaid          Soloist: Connor Burrowes

 今回のアルバムからConnorの2番目の弟Patrick、そしてセントポールでHead Choristerを務めたこともある、絶対音感の持ち主と言われるAndrewが初めてソリストとして参加しています。
 PatrickはConnorの声質に似ているとよく言われますが、私もこのアルバムを初めて聴いたときそう思いました。硬質な感じがConnorに似ていますが、Connorよりもしっとりとしている印象です。もう少し高音の出てくる曲や自分を主張できる曲を歌っているのを聞けば、また違った印象かもしれません。
 第4・5曲目で速いリズムを一生懸命に発音しようとしているのが微笑ましいです。Patrickが歌っている曲で一番好きなのは、やはり第9曲目ですね。切ない感じのメロディーが好きです。以前イギリス旅行でオックスフォードに行ったとき、ストリートでこの曲を歌っている盲目の女の人がいました。声楽を専攻している(していた?)学生という感じでしたが、やっぱりこの地方の伝統的な歌なんだなあと思いました。

 Andrewの声も硬質で、さすが絶対音感の持ち主だけあって音程に安定感があり、安心して聴いていられます。Edwardは前回のアルバムより声をはっきり聴くことができたので、前回とはまた違った印象です。柔らかな声質という印象は変わりませんが、「弱々しい儚げな声」ではなく、丁寧にしっかりと歌っているなと思いました。第3曲目のマハラリィの華のようなゆったりとした曲で、特にそう感じました。

 全体的に神秘的な雰囲気をかもし出しており、このレコーディングに参加しているchoirの硬質な響きがとても曲調に合っていると思います。
 そして何と言っても、最後にConnorのしっとりとしたアルトの歌声で締めくくっているのがこのアルバムの絶妙なところでしょう!!何度聴いてもしっとりとした切なさと、Connorの落ち着き払った貫禄の歌声が感動的です。Connorの2人の弟たちも、どんな想いで兄の歌声を聴いていたのか、ぜひ聞いてみたいところです。


B「The Flower of Magherally」(マハラリィの華)
VICP-35021.jpg bac唯一のシングルです。発売年月日は「air」と一緒なのが不思議ですが・・・同じ曲が含まれているし、「air」のアルバムに含めてしまっても良かったのではと思ってしまいますが、何か意図があってのことなのでしょうね。

 曲は全部で6曲。シングルにしては多いかなと思いましたが、3〜6曲目はほとんど1分半以内の短い曲でした。ソリストは全てEdwardが務めていますが、第5曲目のみTim Burttとのデュオになっています。

   
1.The Flower of Magherally(Free Love Mix)  4.Balulalow
   2.The Flower of Magherally          5.Spring Carol
   3.Procession                 6.Deo Gracias

 第1・2曲目は「air」にも収録されていたマハラリィの華です。北アイルランドの伝統的な歌で、2ヴァージョンの伴奏で聴くことができます。
 第3曲目からはブリテンの「A Ceremony of Carols」からの作品です。7人という少ない人数のchoirですが、それぞれの天上に突き刺すような鋭い硬質な歌声が曲調にとても合っていて、どの曲も何となく物悲しく神秘的な感じがします。
 3曲目は「Hallelujah」の繰り返しが柔らかく優しい印象を与えています。4曲目はYoutubeでエドが歌っている映像を見ることができますが、エドの繊細で柔らかでありながらかつ鋭い高音をもった声質が、曲に合っていると思います。
 5曲目はエドとTimの美しい二重唱を聴くことができます。そして最後の6曲目。「Deo Gracias」を鋭く繰り返すフレーズが耳に残ります。ちなみに(たぶん)ラテン語で「神に感謝」という意味です。

 短い曲ばかりですが、テンポ良く次々と新しい曲調に変わり、クリスタルな歌声が響き神秘的な感じがするので、なかなかこのCD好きです。マハラリィの華は「air」で聴いているし、買うかどうか迷ったのですが、買って損はなかったかなと思います。


C「Boys On Bach」burrc-bach3.jpg

 アルバム第5弾です。タイトル通り、バッハの曲ばかりを集めたアルバムで、3人のソリストで曲を分担していた「air」とは違って、Andrew Johnsonが1人でメインソリストを務めています。

 このアルバムについては、bacファンの中では賛否両論のようです。バッハという作曲家についてもそうですし、ソリストAndrewの声質の好みも分かれるところでしょう。
 私自身としてはバッハは好きですし、またAndrewの声については、Connorとはまったく違った声質なので好みとは言えませんが(笑)、バッハ独特の陰翳の中に見える一筋の光のような曲調に合っているのではと思います。
 Andrewの声質はまた何とも形容し難いのですが、ペタッとして平たく硬い声というイメージです。絶対音感の持ち主というだけあって、機械音のように一寸のズレもなく極めて凝縮された幅の音程の中で歌っているという感じです。

      1.Ave Maria
      2.Synphonia No.11
      3.Schafe konnen sicher weiden
      4.Air On The G String
      5.Aria: Komm in mein Herzenshaus
      6.Choral: Wohl mir, dass ich Jesum habe
      7.Choral: Herzliebster Jesu, was hast du verbrochen
      8.Choral: Ich will hier bei dir stehen
      9.Aria: Er kommt, er kommt, er ist vorhanden
      10. Aria: Angenehmes Mordgeschrei
      11. Suscepit Israei - Magnificat
      12. Synphonia No.5
      13. Aria: Vergnugte Ruh, beliebte Seelenlust


 さすが教会音楽の巨匠であるバッハの作品を集めただけあって、厳かな雰囲気の中に静かな安らぎを与えてくれるような、そんな印象です。
 日本でもお馴染みの「@アヴェ・マリア」「CG線上のアリア」「E主よ、人の望みの喜びよ」などが含まれていて、合唱も心地良く聴きやすくなっています。

 また、バッハと言えば3声のインヴェンション(AK)が有名で、私もピアノでさんざん練習しましたが、それを声で表現しているのは初めて聞きました。インヴェンションはそれぞれのパートが独立した旋律を演奏し、それが上手く溶け合って融合し1つの曲を奏でるのが特徴でとてもきれいです。ピアノではもちろん1人でその3つのパートを弾きますが、歌ではそれぞれ違った3人がパートを担当し、自分を主張できるのが面白いと思います。
 AではAndrew・パト・エドという豪華な(?)3人でのコラボレーション。エドが3rdを担当しているのを聴いて、この頃がボーイソプラノとしての限界だったのかなあとちょっと悲しくなりましたが…。また、KではSimonさんの弟であるDavidさんの息子(つまりConnorの従兄弟にあたる)、Jonathanが1stを歌っています。さすがは音楽一家であるBurrowes家ですね!Jonathanもどこかの聖歌隊に所属していたのか、気になるところです。

 それから、バッハの有名な合唱曲であるマタイ受難曲(FG)・マルコ受難曲(HI)からも2曲ずつ選曲されています。マルコの方は2曲ともConnorも歌っていますが、このアルバムでは伴奏がピアノになっていたり歌詞が英語になっていたりして、全く違った印象です。特にIの方は最近CMに使われていて、話題になりました。
 そしてこのアルバムからConnorはプロデュースも務めるようになり、ピアノの伴奏も担当しています。ピアノの方は、とても若干17歳の少年とは思えないほど柔らかで繊細なタッチです。
 神秘的で厳かな雰囲気につい聞き惚れてしまう一枚です!


D「BOYS GREGORIAN」
081.jpg このアルバムはグレゴリオ(無伴奏の教会詠唱歌)がテーマとなっており、英国の有名な聖歌隊出身で幼い頃から教会音楽を勉強してきたメンバーにとって、本来の力を発揮するのに適した1枚と言っていいでしょう。

 メインソリストはTristan Hambletonくんです。Tristanもセントポール出身で、最終学年にはトップソリストを務めていたそうです。ダイアナ妃の記念式典やロイヤル・アルバートホールの40周年記念コンサート(世界各国で放送されたらしい)でもソロをとるなど、かなりの活躍ぶりだったそうです。
 彼の歌声はしっとりとしていて、優しく柔らかで安心感のある声です。少年独特のキーンとした高音ではなく、丸みを帯び大人びて落ち着き払った感じです。音程も安定しており、聴けば聴くほど味わい深いです。彼の活躍ぶりも納得できる気がします。
 彼は今もバリトン歌手としてコンサートにも出演しているそうですが、bacで活躍したメンバーが今でも音楽を続けているのはとても嬉しいことです。

    
1.CHRISTE REDEMPTOR       8.STABAT MATER(VIVALDI)
    2.THERE IS NO ROSE        9.O QUAM TRISTIS
    3.MARIA MATREM VIRGINEM     10.ST PATRICK'S BREASTPLATE
    4.STABAT MATER(STEFFANI)     11.VENI CREATOR SPIRITUS
    5.EJA MATER           12.ANGELS FROM THE REALMS OF GLORY
    6.THE LORD, OUR PROTECTOR    13.CHRISTUS VINCIT
    7.O COME, O COME, EMMANUEL


 全体的にクリスタルで神秘的な雰囲気で(歌も伴奏も)、教会音楽だけあって厳かな雰囲気も漂っています。そして今まで以上にコーラスがしっかりしており、ソリストとchoirが互いを上手く引き立てているように感じます。
 特に声の重なり合いが優れていると思ったのは、第5曲目のエヤ・マーテル。TristanとDominic2人のソリストの掛け合い、そしてソリストとchoirの掛け合いからどんどんと盛り上がり声が重なっていく様子がとてもきれいです。Dominicの声はボーイにしてはちょっと変わっていて、最初に聴いたときはガールトレブルかと思ったくらいでした。でも、その声質の全く違う2人だからこそ、ハーモニーに厚みがあるように聞こえます。

 それから第8曲目と9曲目で時折出て来る、フレーズ最後のトリルとh唱法がナチュラルで可愛らしいです(笑)。
 そして第10・11曲目はConnorが友人とともに作詞・作曲をしたものです。この頃Connorは19歳。チャーターハウススクールでもしっかりと音楽の勉強を積み、作曲にも自信がついたのでしょうか。Connorらしい明るく優しい曲調で、穏やかな気持ちになるような曲です。
 ちなみに…第6・7・12曲目では、Connorの妹Elizabethもコーラスに参加しています。ただし、ソロではないのでどんな声かはわかりません。

 Tristanの声が爽やかでしっとりとしていて、このアルバムもかなり好きな1枚なのですが…1つ気に入らないのは、ブックレットのConnorの写真がひどすぎること!!(笑)あのベビーフェイスだったAndrewがかなり成長した姿で写っているのですが、Connorの場合成長というか成長しすぎというか…笑。もう少し写りがいいのを選んでほしかったです。


E「MERRY CHRISTMAS」
mult-bac-xmas3.jpg 7枚目はクリスマスアルバムです。これもかなり好きな1枚!今回は今までで最少のたった6人のクワイア。わずか6人でクリスマスソングなんて、迫力が足りなさすぎるのでは…という心配も何のその、きれいなハーモニーと生き生きとした力強い歌声を聞かせてくれます。

 今回のソリストは、ウィンチェスター大聖堂聖歌隊のトップソリストであったというTom Crowくん。彼の歌声は、今までの歴代ソリストの中ではAndrewの声質に近いかなと思います。ペタッとして線が細いようでいながら、芯の通ったしっかりとした歌声です。
 また、コーラスはたった6人なのにハーモニーが何重にも重なって聞こえ、厚みのあるものとなっており、遠くから降りそそぐような響きがあります。一人ひとりの実力がしっかりしているからなのでしょうね。

  1.Wonderful Christmastime         8.Walking in the Air
  2.Have Yourself a Merry Little Christmas 9.Tomorrow Shall be my Dancing Day
  3.We Wish you a Merry Christmas      10.A Spaceman Came Traveling
  4.White Christmas             11.The Holly and the Ivy
  5.Sleigh Ride               12.O Holy Night
  6.Hark! The Herald Angels Sing      13.Wonderful Christmastime[Ending]
  7.God Rest Ye Merry Gentlemen


 クリスマスにはお馴染みの曲ばかりですが、たった6人のコーラスも新鮮でいいものです。

 特に好きなのは、第3曲目の「We Wish…」のアレンジ。クリスマスソングとしてはあまりにも有名ですが、完全なアカペラで、アップテンポで生き生きとしたアレンジとなっています。キーも元々高めなのですが、さらに高いキーをハモリとしてメロディーに重ねているのがきれいで好きです。
 ハモリというのは単純にメロディーより低いキーで重ねる場合と、高いキーで重ねる場合の2パターンあります。私個人のイメージですが、低く重ねると土台のしっかりした厚みのあるハーモニーとなり、高く重ねるとハーモニーの美しさが前面に出るという感じがします。ただし、高いキーを歌うと声量が大きくなりがちなので、メロディーより目立たないように注意する必要があります。
 この第3曲目ではそのハモリのバランスもバッチリで、高いキーのハモリが独立して生き生きとして聞こえます(おそらくTomくんでしょう)。最後の高音も天上に向かって真っ直ぐ伸び、清々しいです。

 また、もう1つアカペラでハーモニーを聞かせているのは第6曲目の「Hark! The Herald…」です。日本では「あめにはさかえ」という曲名で有名であり、だいたいは大規模なフルコーラスで聴くことが多いのではないでしょうか。この曲ではもちろん高音のハモリもありますが、逆にかなりの低音のハモリもあり、ベースのしっかりした厚みのあるアカペラとなっています。
 他には、第10曲目の少し切ないような歌声や、第11曲目の軽快なピアノ伴奏に合わせた楽しそうな曲調も好きです。ちなみにこの軽快なピアノ伴奏はConnorによるものです。それからこのアルバムにも「O Holy Night」が収録されていますが、こちらはテンポがゆっくりでやや間延びした感じがして、残念ながら(笑)新Choirboysの方が好きです。

 教会音楽はあまり聞き慣れなくて…という方も、このクリスマスアルバムなら気軽に聴くことができるのではと思います。bacならではの、少数精鋭のハーモニーを楽しむことができますよ!


F「bac in paradisum」〜楽園にて〜

VICP-62874.jpg bac最後のアルバム紹介となりました。2004年10月21日にこのアルバムをリリース後、同年12月に来日コンサートを行い、残念なことにそれがbac最後の活動となってしまいました。
 このアルバムはフォーレのレクイエム全7曲を収録したものですが、何と言っても特徴はConnorのボーイ時代のソプラノと現在のバリトンの歌声を一度に聴けることです!なので、今まではConnorをスタートにアルバムによってメインソリストが代わって来ましたが、今回のメインソリストはConnorに逆戻り(?)し、Connorのためのアルバムになっていると言っていいかもしれません。

 Connorのためのアルバム…などとConnorびいきの書き方をしましたが(笑)、2004年のbac公演でメインソリストを務めて注目された、Harry Severくんがソロをとった曲が収められていることでも人気の高い一枚です。
 また、今まではシンセサイザーなどシンプルな伴奏が多かったのですが、このアルバムでは本格的なオケ伴奏であることも特徴です。やっぱりオケのほうが迫力が増すし、より荘厳な雰囲気が漂うような気がします。


      1.Introit et Kyrie     6.Libera Me
      2.Offertoire        7.In Paradisum
      3.Sanctus          8.Ave Verum Corpus
      4.Pie Jesu         9.In Paradisum(Connor Ver.)
      5.Agnus Dei


 
第3・4・7曲目がConnorのボーイ時代のソプラノを使った曲であり、先ほど述べたように伴奏がオケに変わっています。その3曲とも「少年のレクイエム」に収録されており、どれもほとんどConnorのソロでしたが、このアルバムではしっかりとコーラスが入っているので、また違った印象で聞こえます。
 “choir”と言っても、Connorがソロを務めたbacのアルバムはほとんどConnorのソロアルバムだったので、今回のようにコーラスが入るとConnorの歌声がよりくっきりとクリアに輝いて聞こえて新鮮です。

 第2・6曲目ではConnorのバリトンの歌声を聴くことができます。コンサートではテノールやバリトンの歌声を披露していたようですが、私はコンサートに行ったことがないので、このアルバムで聴いたのが初めてでした。男性が変声するのは当たり前のことですが、やはりボーイソプラノとして活躍した少年の、変声後の声を聴くのは複雑なものがあります。(歌を続けているのは嬉しいのですが…。)
 Connorはこのときまだ21歳であり、バリトンの歌声は朗々としていて若々しく、これから訓練を積んでいけばさらに深みのある成熟した歌声になるであろうと期待できただけに、これが最初で最後になってしまったことは、残念という言葉だけでは言い足りません。
 ただ、歌詞を正確に丁寧に発音していたり、特に“t”“d”“s”の発音や巻き舌が、ボーイ時代を彷彿とさせるようなConnor独特の持ち味が出ていて、聴いていて心地良く微笑ましく感じます。

 私がこのアルバムの中で一番好きな曲は、第5曲目のアニュス・デイです。モーツァルト作曲の同名曲も有名ですが、こちらのフォーレ作曲もとてもきれいなメロディーです。曲調が暗くなったかと思えばすぐに明るくなったり、“陰”と“陽”の要素を絶妙に使い分けていると思います。
 そしてその“陽”の部分を晴々と歌い上げているのが、ソロを務めているHarry Severくん。彼はウィンチェスターカレッジの聖歌隊でトップソリストを務めた実力派です。HarryもConnorのように、ナチュラルビブラートやトリルなどのテクニックを駆使するなどしっかりとした歌唱技術を持っており、安心して歌を聴くことができます。Connorと違うと思うところは、Connorよりさらに凛とした気品のある歌声であるということです。
 曲の始まりに流れるメロディーがテーマのようになっており、曲中で繰り返し流れるのですが、そのメロディーが何とも言えず美しく、穏やかな安らぎを感じさせます。そのメロディーを主に演奏しているヴィオラ・チェロの音色も素敵で、何度聴いても感動してしまいます。(ちなみにチェロ奏者2人のうちの1人が、Connorの叔父Davidさんです。)このチェロの音色にそっとのせるように歌うHarryの歌声が、雲のすき間から差し込んでくる光のように、爽やかで晴々としたものとなっています。

 第8・9曲目はボーナストラックです。第8曲目はモーツァルト作曲の有名な合唱曲で、私が大学1年生のとき合唱の授業で初めて歌った曲なので、特別な思い入れのある曲です。メロディーもとてもきれいで、最後の盛り上がりがとても好きです。
 本来は混声四部で歌う曲ですが、このアルバムではCharlie Daltonくんが完全なソロで歌っています。私としては四部で歌ってほしかったところですが、独唱は歌詞をじっくりと聴けるし新鮮でした。Charlieくんはどちらかと言えば典型的なボーイソプラノといった声で、少しあどけなさを感じさせる歌声です。
 第9曲目は同名曲第7曲目がコーラスも入っているのに対して、完全にConnor一人での歌唱となっています。

 ブックレットに載っているConnorのメッセージで、「バリトン歌手としての最初のステップを踏み出し、このグループの輝かしい未来を確信をもって見つめることができる」という言葉があります。ここを読むと、Connorはこれからも歌い続け、bacはまだ活動を続けるという意味だと誰もが期待したと思うのです。実際、私もそういう意味にとりました。
 でも、このアルバムが再びConnorメインとなり、Connorのソプラノからバリトンまでの歌声を全て出し尽くした集大成のようになっていることは、やはりここで活動が終息することを予期していたのかなと複雑な気持ちになります。このアルバムを聴くたびにそんな悲しい気持ちになるのです・・・。


           ********************


 最後は何だか湿っぽくなってしまいましたが、bacファンの皆さんもそれぞれこのアルバムに対する思い入れがあるのではないかと思いながら書きました。
 2004年なんてまだまだ最近!と思っていましたが、もう4年近くも経つのですね…。私は残念ながらコンサートに行くことはできませんでしたが、bacに出会うことができたのは幸運だったと思っています。
 bacの作品がいつまでも愛され続け、皆さんの心の中に素敵な思い出として輝き続けることをお祈りします。



 
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