腹式呼吸とビブラート


 次に、声楽には不可欠な腹式呼吸と、ビブラートの関係について紹介したいと思います。
 ただし、パッサージョの記事についてもそうですが、あくまでも私が習った先生のやり方であって、それが最善の方法であるというわけではありません。色々な声楽関連のサイトを見ますと、私が習ったやり方を否定するような全然違う考え方が紹介されていたりします。習った先生や門下、ひいては国によって色々なやり方がありますので、その中の1つの方法の紹介だと思ってお聞きください。

 声楽を習い始めて、一番最初に練習したのは腹式呼吸です。それまで腹式呼吸と言えば、単に息を吸ったときにお腹を膨らませる…という程度にしか思っていませんでしたが、なかなか奥が深いことがわかりました。
 まず、息を吸うときは口を閉じて鼻から吸います。これにはビックリでした。実は鼻から吸った方がより多くの量を吸えるし、舞台上で口が渇かないようにする目的もあるのだとか。とは言っても、最初は鼻からなんて全然吸えませんでした。(曲を歌っている最中で、鼻から吸う余裕がないときは、もちろん口から吸います。)
 そしてお腹を膨らませるのも、下腹部をというより、体の横のウエスト部分(ちょうど腰に手を当てた位置)から背中の方に空気を入れるということでした。腰に手を当てて、息を吸ったときに手が外側の方へ動けば成功です。でも、これはちょっとやそっとの練習では簡単にできません。(特に背中に空気を入れるなんてビックリ!)継続した訓練が必要です。

 次に、息をはくときです。せっかく空気を入れたお腹をすぐにへこませては意味がありません。息をはきながら、なるべく膨らませたまま保ちます。でもそのうち空気がなくなってくると当然へこんでくるのですが、そのときにただまっすぐへこませるのではなく、胃を持ち上げるように、胃の方へ向かってお腹を上に上げてくるような感じにへこませるのです。(そのとき、姿勢が崩れないように気をつけてください!)この、胃の方に向かってお腹を持ち上げるというのが、なかなか感覚をつかめなくて今でも苦手です。先生のお腹はきちんと上に向かっていましたが…。
 練習法としては、腰と下腹部に手を当て、鼻から息を吸って、息を上の前歯の裏に当ててわざと「スー」と強く音を立ててはいていきます。たぶん、初めての人は10秒ももたないと思います。自分も最初はそうでした。できるようになってくると、20秒ぐらいもつようになります。最低でも20秒はもたないとダメみたいです。自分でもどれぐらい続くか試してみましたが、全然訓練をしていない今となっては、20秒ギリギリ続いた程度でした・・・。皆さんもどうぞ試してみてください。鼻で息を吸うのに慣れないうちは、片方の鼻の穴をふさぐと吸いやすくなりますよ。

 次にビブラートです。歌のジャンルによって大きく分けて2つの方法があります。演歌やポップスのようにのどを使う方法、そして主にオペラなどクラシックで用いられるお腹を使った方法です。前者の場合、歌手ののどが動くので見ていてすぐにわかります。
 ここで取り上げたいのは後者の場合なのですが、特に音を伸ばしているときに、支えているお腹を震わせるとビブラートがかかります。このとき、当然ですがお腹を膨らませた状態じゃないと、震わせることができません。スタッカートの練習でお腹をへこませたり元に戻したりしますが、それをもっと小刻みに行う感覚です。
 慣れてくると、自然にビブラートがかかるようになります。お腹で支えながら歌っているわけなので、常にお腹は緊張状態にあり(?)、自然と震えビブラートになるのです。それとは逆に、ビブラートをかけたくない場合は(真っ直ぐ伸ばすときなど)、お腹を硬直させて震えないように保ちます。
 あるとき、のどを使う方法でビブラートをかけたら、先生に「声を震わすんじゃない!」と言われました。お腹を使う場合は声や音を震わすのではなく、「息」を震わせるというようなイメージですね。このように、腹式呼吸とビブラートは切っても切れない関係なのです!(笑)

 ところで少年合唱の場合、どんな発声法をしているのか謎なのですが、ConnorHarryAledなどのビブラートを聴くとごく自然で、しっかりとした腹式呼吸をしているのかなと思います。Terryなんかはのどを使っているのかなと思う曲もありますが、何とも言えません。
 ボーイソプラノはノンビブラートとよく言われますが、ConnorHarryの歌唱テクニック(きちんとお腹を使っているだろうと思われる鋭いトリルや、16分音符の速いリズムなど)や自然なビブラートを聴く限り、成人の声楽家を何ら変わらない発声法を学んでいるのかなあと思います。

 私は声楽を習っていたことがあると言っても、実は合唱経験は大学の授業のみで、自分で合唱団に入っていたことは一度もないのです。(吹奏楽派でしたので)なので、少年合唱を含めた合唱の詳しい発声は謎であり、独唱の場合とは違うのかなど、これから解明していけたらと思っています。



  

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