Other boysopranos


①「The best of Aled Jones」
 言わずと知れた、100年に1人の天才ボーイソプラノと賞賛されたAled Jonesのベストアルバムです。
 Aledはかなりの枚数のアルバムを録音していますが、現在国内盤はほとんど廃盤となっており、唯一手に入ったのがこのベスト盤でした。

 Aledの歌声を聴いた瞬間、なんて恵まれた素質をもった子だろう!と思いました。一般的なボーイソプラノと違って声質が柔らかく、様々な表情をつけて歌うことができ、一瞬これは女声ソプラノなのでは?と思うほどでした。なかなか彼のような声質を持つボーイは、これからも出てこないのではと思います。
 また、Aledが歌っている映像を見たときにも驚きました。歌詞の内容やメロディーに合わせて表情をつけながら歌い、その歌う姿は堂々と自信に満ちていて、まるで歌うために生まれてきたかのように、心の底から歌うことを誇りに思い、楽しんでいるように見えました。
 たいていのボーイソプラノは、多少顔や体を動かすことはあっても、一点を見つめて真剣な表情で歌っていることが多いと思います。これはやはり、「聖歌隊の中のソリスト」と「ソロで歌う少年歌手」としての違いなのかもしれないなぁと思います。
 とにかく、Aledの歌声から表情、表現力、歌う姿勢まで全て生まれながらにもった天性の素質なのではと思います。訓練しただけではなかなかできないことでしょう。


     1.Diolch a Chan      11.Ddwyfol Iesu(Pie Jesu)
     2.Silent Worship      12.Bugeilio'r Gwenith Gwyn
     3.Ombra Mai Fu       13.Amarilli, mia bella
     4.Konnt ich Fliegen    14.Llansteffan
       wie Tauben Dahin
     5.Laudate Dominum     15.Rhosyn Rhudd(Heiden Roslein)
     6.Yr Eheddydd       16.How Beautiful Are The Feet
     7.Caro Mio Ben       17.Panis Angelicus
     8.Where'er You Walk    18.Tosturi Duw
     9.Bethlehem        19.Agnus Dei
     10.Ave Maria        20.Hear My Prayer



 ボーイソプラノが歌う典型的な曲から、イタリア歌曲・ドイツ歌曲まで幅広い曲が収録されており、Aledの様々な表情を楽しむことができます。

 私が一番好きな曲は、第2曲目の「Silent Worship」です。タイトル通り、静かで穏やかにきれいなメロディーが響きます。おススメは“Out in the garden there”という歌詞の部分です。
 あとは、やはり第20曲目の「Hear My Prayer」が好きです。この曲はたくさんの録音がありますが、今までは私の好みに合うソリスト・バックコーラス・テンポ・曲の表情が全てそろった録音にめぐり合わなかったのです。でも、このAledヴァージョンは全てが私の好みに合っているのです!
 それから第1曲目は、もともとモーツァルトのピアノソナタに歌詞をつけたものですが、このメロディーも切ない感じがして好きです。Aledはアリアや宗教曲ももちろん上手ですが、このような短い歌曲のような曲を歌うのにも適していると思います。


②「The Choirboy」~天使の祈り~
AWay-3.jpg 次に、Anthony Wayくんのアルバム紹介です。私が少年合唱を知った初期の頃、色々検索していてよく出てきた名前がConnorとbac、そしてAnthonyでした。どんな声なんだろう?と興味をそそられ、この“天使の祈り”と次に紹介する“天使の歌声”の2枚のアルバムを買ったのでした。この2枚が国内盤では最も知られていると思いますが、残念ながら現在ではほとんどが廃盤か在庫切れで、前述の2枚も含め手に入れるのは難しくなっているようです。

 Anthonyは1982年12月生まれ。…ということは、1983年3月生まれのConnorとは同学年ということになります。ほぼ同時期にセントポール大聖堂聖歌隊にも所属しており(正確にいうとAnthonyの方が1年遅く入っていますが)、ConnorとAnthonyはどんな仲だったのかなぁと想像してしまいます(笑)。
 1995年に英国BBCドラマ「The Choir」に出演したことから、一躍国民的アイドルに。そのことをきっかけに、ソロアルバムも数枚レコーディングしています。愛らしいルックスと正統派ボーイソプラノといった儚げな歌声が、イギリス国民の心を打ったのかなあと思います。
 その後はパンクバンドのドラマーをやっていたこともあるそうですが、現在はアコースティックの道に進んでいるようです。ギターを弾きながら歌も歌っています。

 さて、CD紹介に戻ります。このアルバムはイギリス各地の民謡が中心となっています。いかにもクラシック!といったものではなく、伴奏も素朴な感じになっています。(それとは対照的に、“天使の歌声”の方はいかにもクラシック、宗教歌!という選曲です。)
 全17曲で、第6曲目に私の大好きな“How can I keep from singing”が収録されています(実は、だから買ったというのもあります)。Connorが歌ったのとは全く違うアレンジで、重々しさはまるでなく、田舎の田園風景が思い浮かぶような素朴な曲調になっています。
 また、おススメは第7曲目の“The Green Fields of England”です。美しい草原の姿を永遠に忘れない…と誇らしく楽しげに歌うのですが、途中でバリトンが入り、とてもいいアクセントになっていて素敵な歌です。

 このアルバムが、Anthonyの絶頂期なのではと思います。なぜなら、次の“天使の歌声”はおそらく変声直前もしくは変声しかかっており、残念ながら声が変化しているからです。…とは言ってもAnthonyのアルバムを全部持っているわけではないので、正確なことは言えませんが、Anthonyの本来持っている歌声が一番際立っているのではないかと思います。
 ドラマの方ではやや声が上ずり気味でしたが、このアルバムではそんなこともありません。先ほどAnthonyの声を“正統派ボーイソプラノ”と形容しましたが、あくまでも私のイメージであり独断と偏見です(笑)。Anthonyの声は、Connorの真っ直ぐクリアな声とは正反対で、今にも消えてしまいそうな儚さを感じさせる優しく柔らかい声だと思います。

 

③「Wings of a dove」~天使の歌声~
 「天使の祈り」に続き、Anthonyくんの「天使の歌声」です。
 前述した通り、このアルバムは変声直前もしくは変声しかかっていた頃に録音したものではないかと思います。高い音は少々苦しそうですし、他の歌手とのデュエットではメゾの方を歌っていますし、だいたい「天使の祈り」に比べると明らかに声質が変わっています。録音は1997年1月で、この年の6月に来日したときは既に変声が始まっていたとのことですから、本当に最後の録音です。前アルバムに比べて、声の柔らか味がだんだん消えて線が細くなった印象があります。



        1.Ombra mai fu (Handel)
        2.Panis Angelicus (Franck)
        3.Laudate Dominum (Mozart)
        4.Pie Jesu (Lloyd Webber)
        5.Ave Maria (Bach / Gounod)
        6.O For the Wings of a Dove (Mendelssohn)
        7.For the Beauty of the Earth (Rutter)
        8.The Lord is My Shepherd (Smart)
        9.Pie Jesu (Fauré)
        10Beati quorum via (Stanford)
        11Pie Jesu [Blow the Wind] (Pook)
        12How Lovely is Thy Dwelling Place (Bach)
        13Nunc Dimittis (Burgon)
        14When at Night I go to Sleep (Humperdinck)
        15Hail, Gladdening Light (Wood)
        16I waited for the Lord (Mendelssohn)
        17Abide with me (Monk)

 曲目はいかにもボーイソプラノ!といったものばかりで、好きな曲がたくさんあります。おススメは第8・17曲目かな。第8曲目は、第16曲目でも共演しているタビサ・ウォルティングという少女歌手(Anthonyとは友達らしい)とのデュエットですが、このタビサがとてもきれいな声をしていて、Anthonyのメゾ声とよく合っています。第17曲目の方は、よく葬儀の場面などで流れるのを聞きますが(実際は主に対する信仰の気持ちを歌ったもの)、落ち着いた雰囲気でとてもきれいな曲です。Anthonyの声もその雰囲気によく合っています。
 他に第14曲目も好きです。オペラ『ヘンゼルとグレーテル』の中の曲で、ヘンゼルとグレーテルの二重唱です。大学のオケの授業で演奏したことがあり、歌は短いですがとてもきれいなメロディーです。ただ残念なのは、歌詞が原曲のドイツ語ではなく英語であることです。

 出されたCDの枚数や選曲を見ると、本当にAnthonyは恵まれていたなあとうらやましく思います。少年歌手であれば(少年じゃなくても?)一度は歌ってみたい曲を、Anthonyは全て網羅していると言ってもいいのではないかと思います。
Connorにもこのアルバムの曲を歌ってほしかったなぁ…。


④「The Choirboy's Christmas」

 Anthonyをソリストとした、セントポール大聖堂聖歌隊のクリスマスアルバムです。実はこのアルバム、バックコーラスのConnorの声がとてもよく聴こえることで有名(?)で、ぜひ聴いてみたいと思っていました。でも、いくら探してももう廃盤になってしまっていて、手に入れることができませんでした。
 ところが、2007年11月7日に再発売されることになり、念願だったこのアルバムを手に入れることができたのです!ついに、もう手に入らないとあきらめていた幻のアルバムが聴けるんだーと感動したものです(笑)。なぜ急に再発売になったのかはわかりませんが、私と同じようにずっと探していた人がたくさんいたのではないでしょうか。

  1.O Come All Ye Faithful          12.Ding Dong! Merrily on High
  2.Silent Night               13.Maiden Most Gentle
  3.Sussex Carol               14.O Men from the Fields
  4.Once in Royal David's City        15.Twelve Days of Christmas
  5.Tomorrow Shall Be My Dancing Day     16.Three Kings
  6.Away in a Manger             17.See Amid the Winter's Snow
  7.Balulalow from "A Ceremony of Carols"   18.Past Three O'Clock
  8.Joy to the World             19.O Little One Sweet
  9.Holly and the Ivy             20.Do You Hear What I Hear?
  10.In the Bleak Midwinter          21.Hark! The Herald Angels Sing
  11.What Child Is This?


 このアルバム、かなり好きです。セントポールのクリスマスアルバムは他にもいくつか持っていますが、それらと違うのはやはりソリストが引き立っていること。Anthonyの柔らかな儚い歌声が、合唱とよくマッチしています。声量のバランスもなかなか良いのではと思います。
 それから、伴奏もきちんとオケを使っていますが、単なる伴奏ではなく合唱の一部であるかのように、歌とともにハーモニーを作り出しています。例えば第10曲目なんかが特にそうです。ヴァイオリンの音色が素晴らしい。
 特に好きな曲は第13曲目。伴奏が好きだし、メロディーが穏やかで優しい感じがします。途中から“Ave Maria”を繰り返し歌うAnthonyのソロと、合唱との掛け合いから融合していく様子が絶妙で、聴いていて清々しさを感じるおススメの1曲です。

 そして何と言っても、Connorの輝く歌声が際立っていること!本来であれば、合唱の中で特定の声が目立つのは良いことではありませんが、Connorの場合は別格ですね(笑)。「ConnorがAnthonyを喰ってしまっているのでは!?」というレビューを見たことがありますが、まさにそんな感じでどうしてもConnorの声に耳がいってしまいます。
 音が高くなるとさらによく聞こえますが、特にConnorの声が目立っていると感じたのは第16曲目の2分30秒あたりと、第17曲目の3分40秒過ぎです。第17曲目の方は特に好きで、Connorの声が目立つ部分はボーイのみになるのですが、Connorのクリアで澄み切った高音が心地良く響き渡り、何度聴いてもこの箇所には癒されます。また、曲の最後に全員が音を伸ばすところでも、Connorの透明感のある高音が合唱の中から輝いて聞こえます。これもおススメの1曲です。

 さすが存在感のあるConnorの声。声質が目立つというのもあるかもしれませんが、やはり声量もあるのでしょうね。ソリストよりも目立ってしまうなんて、バックコーラスにしておくのはもったいない気もしますが、Connorがコーラスに入ることで合唱が引き締まって聞こえます(Connorびいきの欲目かもしれませんが…笑)。豊かな才能をもった人と一緒に演奏することの影響はかなり大きいです。自分もそういう経験がありましたが、自分も負けずに頑張ろうと限界以上の力が出ることもあります。きっと、そんな大きな影響力がConnorにもあったことでしょう。


 ・・・結局、「Other boy sopranos」というカテゴリーにしながら、話題はConnorばかりになってしまいました。いつものことですが…笑。
 それにしても、Anthonyはなんと貴重な録音をたくさん残しているのでしょう。少年時代に、こんな貴重な経験をたくさんできたことをうらやましく思います。



⑤「BORN TO SING」
 続いては、Terry WeyくんのCD紹介です。Terryは1985年スイス生まれ。1995~1998年までウィーン少年合唱団に所属し、ソリストも務めました。5歳下の弟Lorinも有名なボーイソプラノで、Terryはデュエットで一緒にレコーディングをしたり、Lorinのアルバムでピアニストとして参加したりもしています。Wey家自体が音楽一家で、Terryのお父さんやお母さんも彼らのアルバムに様々な楽器で参加しています。
 Terryはウィーン退団後に2枚のソロアルバムを出していますが、これがその最初の1枚です。2枚目の方はおそらく既に変声が始まっており、どちらかというとアルトに近い声になっています。なので、Terryのボーイソプラノ時代の貴重な1枚と言っていいでしょう。

 ちなみに私はウィーンのCDは1枚しか持っていないですし(それもたぶんTerry時代ではないと思われる)、ウィーンはソリストの名前をほとんど書かないので、調べただけではどの曲でTerryがソロを歌っているのかということはわかりません。ウィーンファンの方ならすぐにわかるのでしょうね。きっとTerryはウィーンの中でも人気のあるソリストだったのではないでしょうか。

     1.Standchen aus Shakespeares "Cymbeline" (Schubert)
     2.Standchen (Rellstab)(Schubert)
     3.An die Natur (Schubert)
     4.Ave Maria (Schubert)
     5.Panis Angelicus (Franck)
     6.I. Exsultate, jubilate (Mozart)
     7.Recitativo: Fulget amica dies (Mozart)
     8.II. Tu virginum corona (Mozart)
     9.III. Alleluja (Mozart)
     10Domine Deus, aus "Gloria" (Vivaldi)
     11Greensleeves (Vaughan Williams)
     12Edelweiss (Rodgers & Hammerstein)
     13Mamma (C.A. Bixio)
     14Wiegenlied (Mozart)
     15Wiegenlied, Op. 49, Nr.4 (Brahms)


 このアルバムには、ボーイソプラノには珍しく(?)私の好きなモーツァルトがたくさん入っています。モーツァルトはかわいらしく軽快なメロディーが特徴で、女声ソプラノにも好まれる作曲家です。Terryの明朗快活な声が、そのモーツァルトの曲調によく合っていると思います。

 どれも優しい曲調で、ゆったりとした気分で聴ける曲です。第1・6・9曲目が快活な曲で、Terryの良さが存分に伝わってきますが、特に好きなのは第9曲目の「Alleluja」です。歌詞が「Alleluja」しかないのに、様々なメロディーで歌いこなし聴いていて飽きません。特に最後、「lu」の音がhighCまで上がる盛り上がりの部分が圧巻です。
 他にも特徴として「A(ア)」(もしかしてLaかも?)で細かいリズムを歌ったり、トリルが多かったりしますが、Terryは力強く歌いこなしています。また、低音も安定して出すことができ、高音になっても比較的声質が変わらず下から上まで一定した声を出せるのがすごいなと思います。
 また、第10曲目ではTerryのお母さん、Peggyさんがオーボエを担当していますが、オーボエの優しい音色がこれまた優しいメロディー&優しいTerryの声と合っていてとても良いです。

 Burrowes家もそうですが、兄弟でボーイソプラノの才能があるのはすごいことだし、そして弟が兄の後を追って同じ聖歌隊に入るというパターンがまた良い!(笑)
 同じ兄弟でもLorinとはまた声質が全然違いますが、硬質で力強い声が好きな人にはおススメの1枚です。あ、さらにモーツァルトが好きであれば尚良し(笑)。



  

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